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第97話

◇ ◇ ◇ ◇ 「ほ、翻儒―――その……こうやって面と向かって会話するのは久しぶりだけど……元気……だった?」 「…………」 赤い絨毯が敷き詰められた廊下を、僕と王花火様―――そして、先程から僕が話しかけても反応しようとしない翻儒の三人とで黙々と歩き続ける。 赤守子から黒守子に降格となった燗喩殿は他の守子達や王に直接謝罪の挨拶をしてくるといって――既に僕らとは別れていた。 そして、よそから来た薊は――母上と共に王宮内の何処かへと去っていき、門の前には仮面を被ったかの如く無表情な翻儒と――久しぶりに幼なじみに再会した事で喜びに湧く僕――そして、心を壊されてしまい虚ろな表情を浮かべる事しか出来ない王花様の三人が残されるのだった。 「翻儒―――翻儒、何故……僕を無視するの?お願いだから答えて――ほ、」 「……っ…………!?」 ――ばしっ……!! かつての優しく無邪気だった翻儒とは別人のように、まるっきり僕を無視するかのような反応を示してくる。 そして、彼に触れようと伸ばした僕の手を無情にも叩いて振り払ってきた翻儒の様子を目の当たりにした僕は何がなにやら訳のわからないまま――とうとう、王宮内に存在している牢の前へと着いてしまうのだった。 ――がちゃんっ…… 牢の鉄の檻を閉める無機質な冷たい音と僕の嗚咽だけが辺りに響き渡るが、そんな状況でさえも――かつて優しく無邪気だった翻儒は此方を振り向く事さえしようとせずに、そのまま牢の前から去って行ってしまうのだった。

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