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第101話

◇ ◇ ◇ ◇ まるで別人のようになってしまった幼なじみの翻儒と別れた後、僕と王花様は再び暗い牢の中で共に過ごしていた。 とはいっても―――牢の中なので何もする事もなく、ただ虚空を見上げ時が刻々と過ぎていくのを、膝を抱えながらじーっと待つばかりなのだけれど。 周りを見ても廃人同様の僕らなどに関心すらないためか此方に目を向けようともしないで、牢の檻の前にボロ布のような衣服を身につけて立っている《牢守り》の男が一人いるだけだ。 こうして思うと―――かつて、黒子様(世純もいたが)がこの牢に押し入ってきた光景が懐かしい。それが僕と王花様にとって良いことであれ、悪いことであれ―――この牢の中で廃人同様のように呆然とただ時が過ぎ去るのを耐えるのよりは遥かにマシだからだ。 「―――おい、」 「…………」 「―――おい!!」 その怒鳴り声で、ハッと我にかえった僕は声が聞こえてきた方へと慌てて目を向ける。そこには《牢守り》の他に―――誰かが立っている。 だが、暗いせいであまり良く姿が見えない―――。 「―――お前……そ、それと……王花……様。今すぐ牢から出てもよいとお達しがあった。それでは、燗喩殿――この者達を宜しくお願い致します」 《牢守り》の男の側に立っている者―――。 それは僕が世界で一番愛して止まない燗喩殿だったのだ。

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