102 / 151
第103話
◇ ◇ ◇ ◇
「これは、これは……魄さま、王花様――ご無事で何よりでございます……さあ、此方へ……まずは、お二人の身なりを直しましょう」
「……っ…………!?」
牢から出て行き、燗喩殿と共に歩んで行った場所――それは大勢の守子達が集まる部屋だった。久方ぶりに他の守子達と会うため緊張しつつも部屋に一歩踏み入れるやいなや、とある守子が貼り付けたようなわざとらしい笑みを浮かべながら上辺だけは僕を敬っているかのような言葉を話しかけてくる。
「いやはや、全くでございますな。一体、何故にあなたのような立派は御方が牢になどいれられていたのでございましょう……さあ、此方へお進みくださいませ……魄様、それに……哀れなる王花様――」
今度は別の守子が先ほど話しかけてきた守子と同様に貼り付けたようなわざとらしい笑みを浮かべながら僕へとすり寄ってくる。しかも、後から寄ってきた守子は――あろう事か脇にいる王花様を一瞥すると小馬鹿にしたような笑みを浮かべてから、さりげなく僕の腰へ手を回してきた。
(……っ……この人……この人は確か以前は僕を馬鹿にして蔑んでいた世純の取り巻きの一人である黒守子だ……)
何故、こんなにも王宮を抜け出す前の僕に対する態度が急に変わったのだろうか――。
いや……そんな理由などは僕にとって、さほど重要ではないのかもしれない。
人の心は移ろいやすく、まるで見方を変えると模様が変わる万華鏡のように――ころ、ころと変化してしまう。それが良いことであれ、悪いことであれ――人の心は移りゆくものだ、と改めて実感させられて得たいの知れぬ不安と恐怖に襲われてしまうのだった。
ともだちにシェアしよう!