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第104話

「……認めぬ、決して認めぬ……あのような卑しい身分の者が――屍王様の息子などと……断じて我は認めぬからな」 「ええ、ええ……皆も異常ですぞ――王宮内に流れているだけの単なる噂を本気で信じるとは……まったく愚かですな」 王宮を抜け出す前には悪意の言葉しか曝されていなかった僕に対して急に媚を売るかのような言動を周りの守子達から受けて戸惑いを露にしている僕の前に――冷たい言葉が突き刺さったため驚きつつもそちらへと目線を向けた。 (何故――何故、僕が屍王様の息子だと……ああ、そうか……だからこんなにも――) 一部を除いた守子達が急に僕に媚を売るようにすり寄ってきたのか――。 屍王の息子だと信じきっている守子達は僕の王宮内での存在自体を認めた訳じゃなく――ただ、権力と屍王からの信頼を得たいだけなのだ。 (此処には――僕の居場所なんかない……) そう思うや否や――僕は側にいて媚を売るように笑みを浮かべていた守子の制止の言葉も聞かずに脱兎の如くその部屋から出て行き――僕が王宮内で唯一、本当の自分となれる場所へとひたすらに走って行くのだった。 部屋から出て行く直前――その場には相応しくないような恐ろしい般若の面を被った男が僕の走っていくのをじぃっと見つめている事になど知る由もなかった。

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