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第110話

◇ ◇ ◇ ◇ 「……んん、此処は――?」 「……魄よ、此処は私の寝所だ。お主達が中庭で大騒ぎしていると聞きつけ、警護人らと共に行ってみれば、お主は気を失って倒れているは……薊は腰を抜かして血まみれの世純殿の身を抱えながら号泣しているわ……何体かの亡骸を発見するわで――大事だったぞ。一体、何が起こったのだ?」 ふっ――と目を開けると其処は見知らぬ部屋だというのが分かった。何故なら見覚えのない赤い天井が真っ先に目に飛び込んできたからだ。可愛らしい花形の提灯ランプが煌々とした光を放ちながら辺りを照らしている。確か、この花形提灯ランプは――海を遥かに渡った遠い異国によくある物だと母上が仰っていた。 「か、燗喩殿……もしかして、ずっと僕の看病をして下さったのですか?そ、そうだ……世純殿は――薊と赤ん坊は……それに、王花様はっ……如何なさったのですか?」 「魄よ――慌てるのも理解できるが少し落ち着け。順に答えよう。世純殿は尹医師の看病を受けているが――命には別状ない。そして、薊と赤ん坊だが……今は妃宮にいてこの事件についての話を王妃様に告げている事だろう……王花様ならば、其処にいるぞ?先程から一心不乱に何かを白紙に書いておる」 燗喩殿が顔を向けた方向へと目線を向けると、確かに其処には――床に両膝をつきつつ何枚も何枚も白紙に向かって筆で何かを書いている王花様がいるのだった。

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