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第121話

王花様も――、 薊も、背中におぶさってすやすやと眠っている赤ん坊も――、 身動きすらとれずに床の上に力無く倒れている屍となった者以外の息も絶え絶えの守子達も――、 息がある者達は全員――母である尹の周りに強制的に集められ、体を縄で縛られて自由を奪われてしまっていた。僕は僕で、その異常ともいえる光景に唖然としながらも、普段通りに優しい笑みを浮かべる母に手招きされると――まるで操り人形にでもなってしまったかのように自分の意志に反してふらふらとした足取りで満足げに微笑みかけてくる母の前まで歩いて行く。 「……は、母上――何故、何故……このような酷い事をなさるのです?」 「大体、役者は集まりましたね……ですが、まだ……まだ足りない。あの男達の命を奪わねば……私の大いなる計画は……完成しない」 ――母は、今……何と言った!? あの男達、とそのように言ってはいなかったか? これ以上、酷い事を母はするというのか……一体……誰に対して? と、そのように僕が疑問に思っていると――またしても襖が勢いよく開かれ――其処に見覚えのある男が三人いた。 ――ひとりめは、この国の王である屍王。しかし、今は縄で体を縛られて額から真っ赤な血が流れて苦痛そうな表情を浮かべている。 ――ふたりめは、同じように縄で体を縛られて忌々しそうな表情を浮かべている世純だ。彼は部屋の中に薊と赤ん坊が囚われているのを知るや否や僅かに動揺しているような表情を浮かべた。 ――さんにんめは、真っ黒な着物を着て般若の面を被った人物で、囚われの身の屍王と世純を乱暴に部屋の中へと突き飛ばした。そして、恭しく母に向かってお辞儀をすると、突き飛ばされたせいでうつ伏せとなり床の上に倒れ込んでしまった屍王と世純の体を踏みつけてから――母の方へとゆっくりと歩いてくる。 僕は慌てて、床にうつ伏せとなった二人の元へと駆け寄ろうとするが、それを許さないといわんばかりに側に歩み寄ってきた般若面の男からぐいっと乱暴に引き寄せられてしまうのだった。

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