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第123話

「……魄、お前にとって……俺はどんな存在なんだ?俺が前に素直な気持ちを告げた時、お前は答えをはぐらかし――そして何も言ってくれぬまま俺と向き合う事を避けた。挙げ句の果てに、他の男に現を抜かすなんて――。俺が今までどんな気持ちを抱きながら苦しみに耐えていたか分かるか?」 「……ほ、翻儒……」 「お前は俺の事になど眼中にもくれず――忌々しい燗喩の事ばかり。挙げ句、流刑となった燗喩を救うために王宮を脱出するとは――何と愚かだ……魄よ」 ぎゅうっと拳を握り締めながら――どことなく切なそうな表情を浮かべて翻儒はポツリと僕に向けて漏らした。その時だけは――かつて共に過ごした幼い頃の翻儒の泣き顔と瓜二つで、その余りのやるせなさに僕は胸がきゅうっと締め付けられてしまう。 「……魄、私が哀れなる翻儒を救ってあげたのです。大いなる計画を果たせば、きっと――魄が振り向いてくれると助言してあげたのです」 「……母上が――翻儒を救う?それが、どうして何人もの守子達の命を無惨に奪う事に繋がるのですかっ……彼は、いや彼らは私と翻儒との幼い頃との関係には関わりなどないではありませんか!?」 「物事には理由があるのです……それをこれから教えてあげましょう」 母は冷たい氷のような声色で話しかけてくるのだった。

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