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第124話

「魄――貴方はこれまでこの王宮内において……Ωの劣等種と蔑まれてきました。無論、中には例外もいて――貴方を蔑む事なく好意的に接してくれていた人物達もいらっしゃいましたが……それはほんの僅かで、この王宮内にいるほとんどの守子達は貴方に対して冷たかった」 「……ずっと――貴方の母として心苦しく思ってました。私の大事な宝物である貴方が――悲しむ顔を見るのは拷問にかけられるよりも酷で身を引きちぎられそうな思いでした……ですが、そんな時にこの翻儒が私に救いを求めてきたのです」 『魄の心を俺の物にしたいのです……俺だけの物にしたいのです――そのためならば理性もこの身でさえも……魂さえも貴方に差し出しても構わない……どうか、俺を――魄をお救い下さいませ……御神様』 ――と、そのように翻儒が言ってきたと母上が……いや、かつて母上だった誰かが僕に向かって言ってきた。 「……貴方に酷い言葉を投げ掛けてきた守子達も、貴方だけでなく私の第二の子と言っても過言ではない翻儒に酷い事をした黒子も――私の心を捕らえるだけでは飽きたらず私の息子である貴方にまで口にするにもおぞましい程の事をしようとした幼なじみだった護衛官も――全てが許せなかった……そして、こいつらも――私は決して許さない!!」 ――ぐいっ!! 憎しみと怒りに満ちた――正に鬼のような表情を浮かべながら、瞳孔の開ききった鋭い目付きで囚われの身となっている屍王と世純の髪を思いきり掴みながら母は辺りに響き渡る程の大きな声で叫ぶのだった。 もはや、かつて僕に優しく笑みを浮かべながら話しかけてくれた母上の面影は全くといっていい程に失われていた。

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