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第125話
「……めよ……止めよ……尹、何ゆえに……このような事をする――答えよ、愛しい尹よ……」
「その御言葉……その御言葉に私は幾年も騙されておりました……屍王様。あの忌々しい村で過ごしてきた頃からずっと――何年も貴方の言葉を信じてきた――しかし、貴方は私を――息子の魄を裏切った。こともあろうに、あのおぞましき黒子と身を重ね――其処にいる赤ん坊をこさえるなど……あなたは――私と魄をも侮辱した!!こんな呪われた赤ん坊など――今、この場で滅びるべき存在――愛しい翻儒、その赤ん坊を皆の目の前で始末しておやりなさい」
「畏まりました――偉大なる御神様。貴方様の御言葉のままに……」
すっ――と無表情のまま立ち上がった翻儒は何の躊躇もなく怯えながら身を震わせている薊がおぶった赤ん坊の元へと一歩、また一歩とゆっくりとした足取りで近づいてゆくのだった。
「ほえぇ……ほええっ……おぎゃあああっ……」
己の身の危険を察知したかの如く叫び声をあげる赤ん坊は助けを求めるように、薊の身へとすがり付くのだった。
「儂は……お主らを裏切ってなど――おらぬ!!これ以上、罪を重ねるのは止めよ……尹!!」
と、そんな時―――、
びり、びりと辺りを揺らしてしまう程の大きな声で屍王が尹に向けてはっきりと言い放つのを見て――僕は思わず父である屍王の方へと戸惑いつつも目線を向けてしまうのだった。
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