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第128話

「遅い……遅い――今更、そのような事を申した所でもう遅いのです……獅鬼、貴方を含め……この忌々しい世純を始末すれば――私の大いなる計画は終わりを告げる……私の身が滅びようとも――この愛しい我が子である魄を救うためなら……私は鬼にですら……な……」 「ふざけるでないっ……尹――貴様、己の重ねた罪が――どれ程重いのか分かっておるのかっ!!?」 ――不意に、壺の破片を手に持ちながら【大いなる計画】という名の復讐心に憑依され――よもや完全に別人となってしまった母に向かって鋭い世純の怒号が響き渡る。 普段は忌々しい程にわざとらしいくらい冷静沈着な世純だが、今だけは素の彼を見た気がした。それは、その厳しく歪められた表情と自らの身を縄で拘束されているものの脇で身を震わしながら怯える薊と赤ん坊を庇うかのような素振りのせいだと僕は何となく思った。 「……いくら、血の繋がりのある子の魄を守るためとはいえ――無関係な奴らまで犠牲にしようとするとは……貴様が魄に抱いているのは――いや、抱いていると思い込んでいるのは……本当の愛などではない!!そんなものは――紛い物の偽りの愛に過ぎない……賢かった貴様が――何ゆえ、それに気付かなかったというのかっ……」 何処かで他の誰かから聞いた覚えがあるような言葉を今まで散々、忌々しいと感じていた世純な口から聞いて――僕は目を丸くしながらも、とても演技からくるものとは思えない本心の言葉を狂った母に投げ掛ける世純を呆然と見つめるのだった。

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