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第133話

その事実を愚鈍な僕自身がようやく理解し、王花様の真実の愛を容認した時――、 「王花様……王花様っ!!貴方様は――僕は貴方様の願いからのらりくらりと逃げ、挙げ句の果てに――その思いを無視したせいで心を壊されてしまったというのに……それでも……それでも僕を――守って……愛して下さっていたのですね」 「…………」 ぽろ、ぽろと止めどなく瞳から涙を溢しつつ目の前にいる無言のままの王花様の小さくて折れてしまいそうな程に細い体に、ぎゅうっと抱き着いてしまう。そして、そんな僕の行動に答えるかのように――王花様が不意に一筋の涙を溢したのだ。 その王花様の僕に対する想いがこもっているであろう綺麗な涙の雫を見て――僕は覚悟を決めた。そして、すうっ――と思い切り息を吸い込んで吐いてから王花様の目を真っ直ぐに見据えて、今まで言えなかった想いを告げるために口を開く。 (王花様、申し訳ありません……ですが、これが僕の本当の気持ち――僕の心からの願いなのです……) 「――王花様……申し訳ございません。僕は――貴方様からの御身契りの相手には……なれません。何故なら――今、此処に……僕が世界で一番愛する方――御身契りをしたいと願う相手の方がいらっしゃるからです」 「…………」 王花様は僕の素直な想いを聞いてさえも、やはり何も言葉を発する事はなかったが――やがてゆっくりとした足取りで部屋から出て行った。 そして、その王花様の行動に引き寄せ拉れるのように――赤ん坊をあやしていて疲弊しきっている薊とにやにやと下品な笑みを浮かべながら此方を見つめている世純も共に部屋から出て行ってしまうのだった。

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