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第135話
「か、燗喩殿……僕はこのような行為に慣れてはいないのです――ですから、その……優しく……して下さいませ」
「――戯れ言を……。そのような事は、とっくに分かりきっている。そちはは私だけの運命の番……それ故に、私だけに身を任せていればいいのだ……魄よ、この御身契りの行為が終わったら……私と永遠に結ばれるため契婚の儀式をしに行くと約束してくれ」
契婚とは――御身契りの儀式が終わったばかりの運命の番同士であるαとΩが、永遠の愛を約束する為に執り行う儀式の事で王宮内の専門術師の前で一連の儀式をするというものであり、大半は儀式を行うαとΩが多いのだが稀に行わない者達もいるため確認のために聞いてきたのだろう。
【契婚を行えば器となる体だけでなく、その魂さえも運命の番同士は一心同体となり――永遠の愛を誓い合える……契婚を執り行わなければ――その者達には……破滅が――】
と、またしても過去の記憶に囚われ――母の悲しそうな顔が思い浮かんできた。そういえば、母は今まで一度も父との契婚の儀式の事については何も言わなかった。
(恐らく……母は――父と契婚の儀式をしなかったのだ……だから――)
「魄よ、そちは……何をしている?早く衣を脱げ……風邪を引いてしまうではないか」
「も、申し訳……ございません――燗喩殿!!」
過去の記憶に思いを馳せてしまっていた僕の目に――既に衣を脱いで一糸纏わぬ燗喩殿の逞しい裸体が飛び込んできたため、思わず余りの羞恥から目を背けつつ――震える手で衣へと手を掛けようとする。
と、その時――
――どさっ……
「そちを待っていたら――夜が明けてしまいそうだ……私が脱がしてやろう。そちは――そのまま身を委ねていればよい」
「……そ、そんなっ……んんっ……」
羞恥から目を背けて油断しきっていた隙をついた燗喩殿は、普段の彼から想像もつかぬような力強さで僕の体を床へと押し倒し、そのまま抵抗の言葉を言おうとした僕の唇を己の唇で僅かばかり乱暴に塞ぐと――にやり、と悪戯っぽく笑みを浮かべるのであった。
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