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第144話
「ひゃっ……つ、冷たいっ……それに、いささかねばねばしていて……んっ……何だか変な気分になります……失礼ながら誠にこれが魂身浄薬とやらなのですか?」
「…………」
こくり、と―――再び無言のまま頷いた木偶の童子を見て、僕はそのまま何も言えなくなってしまった。まさか、魂身浄薬とやらがこんなにも冷たくて――しかも、まるで海藻の一種である芽歌舞のように粘り気があり触った途端に僅かばかりの嫌悪感を抱いてしまったのだ。
「……魄よ、少しばかり我慢せよ――この試練を乗り越えれば……私とそちは目出たく運命によって導かれた夫婦となり得るのだ……さあ、はようあの大釜へと参るぞ――」
「か、畏まりました……燗喩殿……」
隣にいる燗喩殿は既に魂身浄薬を全身に塗り込み体を清め終わっていた。天衣は雪のように真っ白で、尚且つ薄いひらひらとした布の素材で出きているせいで――燗喩殿の胸元にある桃色がかった秘所や、挙げ句の果てには下半身で緩く勃起しかけている魔羅が透けて丸見えとなっているため僕はあまりの羞恥から今更だが気まずそうに目を反らした。
――ぬち、ぬちゅっ……ぐちゅ……くちゅっ……
(うう、恥ずかしい……恥ずかし過ぎる――燗喩殿だけならまだしも……今、この場には木偶の童子と呼ばれた人といるというのに……)
林檎のように顔を真っ赤に染め上げながら、何とか羞恥心に耐えきり得たいの知れない魂身浄薬で身を清めると、そのまま燗喩殿と共に大釜の中へと入った。
――大釜の中には透明な液体が僕の肩くらいにまで注がれていたのだが、ぐつぐつと煮えたぎっているように見えて温度は其れほど高くもなく、むしろ気持ち良いとさえ感じる程の心地よさだ。
と、それは――唐突に安心しきっている僕に襲いかかってきた。
どくんっ――と心臓が跳ねあがるように脈打ち、僕に襲いかかってきたのは【抗いようがない程に強烈な火照りと快感そのもの】だった。
――しゅるっ…………
「……やっ……な、何これっ……!?」
細長く、ぐねぐねとした気味の悪い動きを繰り返す緑色の得たいが知れない沢山の何かが――急に火照った僕の体全身に巻き付くように一斉に襲いかかってくる事に気付いて呆然としてしまうのだった。
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