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第147話
確かにその手渡された丸薬のようなものを飲み込んでから暫くすると、目が覚めた後も僅かばかり僕を苦しめていた目眩や気だるさがなくなっていき、それどころか――あのような大事を起こし、牢屋に幽閉されている母――それと幼なじみだった翻儒に関する悲しみや不安な気持ち、そして何よりも自らの身や清らかだった魂を捨ててまで悪と憎悪に囚われてしまった彼らに対するやり場のない恐怖心がすーっと消え去って心地よさを感じるまでに回復するのだった。
いつになく――とても清々しい気分で僕と燗喩殿は坊主頭の太った男と木偶の童子へと深々とお辞儀をし、王宮へと戻ろうとした。すると、無言のまま木偶の童子がゆっくりと僕の方に真っ直ぐ近づいてきて――何故だか握手を求めてくる。
――ぎゅっ…………
と、自然に木偶の童子の握手を受け入れ――彼と手を握る。そして、木偶の童子と太った坊主頭の男はそのまま僕らの元から去って行く。
ふと、握っていた手の中に――柔らかな何かの感触を覚えて手の平へと目線を落とす。おそらく木偶の童子が先程、僕に握手してきた時に渡してきたのだろう――。
小さな、親指程の布製の人形が――僕の手のひらにあったのだ。
――空のように清らかな水色の着物を身につけ、
――頭には紫の帽子を被っていて、
――顔のない
そんな布製の小さな人形を見ている内に――次第に再び僕は先程とは比較しようがないくらいの強烈な心地よさを感じてしまうのだった。
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