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第6話 ライフ 1-1

 眠りの狭間。漂う意識の隅で微かに戸を引く音がした。それは気配を消して、足音も立てぬようこちらに近づいてくる。けれど俺は夢現ながらも、その存在を確かに認識していた。 「あれ、起きてました?」 「起きてたんじゃねぇよ。起こされたんだ」  ベッドの脇に立ったその人物を薄目で見上げれば、三木が目を見開いて驚きをあらわにする。だが俺が起きたのを知ると、立ち尽くしていた三木は躊躇いがちにそっとベッドの端に腰かける。その重みでほんの少しスプリングが軋む。 「ごめんなさい。てっきり寝てると思ってたんで」 「……」  ぼんやりとした視界に三木の姿が映った。コンタクトを外しているのではっきりとは見えないが、恐らくもう仕事へ行くのだろう。既にジャケットを羽織り、三木は身支度を調えていた。けれど跳ねた髪先は相変わらずだ。  以前もう少し髪にも時間をかけろと言ったが、身繕いよりも睡眠の方が最優先だと開き直られた。 「なんだよ。仕事じゃねぇの」 「ちょっと顔だけでも見ていこうかと思ったんです」  いまだ眠気が覚めない俺は、髪を梳き撫でる三木の手がむず痒く、小さく唸りながら布団を頭から被った。 「あ、酷い」 「うるせぇ、起こすなって書いて置いただろ」  明け方まで仕事をしていて、こうして布団に潜り込んだのはだいぶ空が白んできた頃だった。

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