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第13話 ライフ 3-2

「んー、仕事のあとの一杯は格別だなぁ。しかも今日は先輩もいるし」 「……黙って飲め」  ぴったりと横に寄り添う三木からは、嗅ぎ慣れた柔軟剤の香りがした。  三木は食べ物を扱う仕事をしているので、職場で制服に着替えても、髪や服にどうしても匂いがついてしまう。しかし匂いを気にする俺が先に帰っている時は、こうしてすぐに着替えたり、風呂に入ったりしてから傍に来る。 「あれ、珍しい。先輩からくっついてくれるなんて、明日は雨かな」 「黙れ」  軽く笑い声を上げて、肩にもたれた俺の頭を三木は壊れ物を扱うように優しく撫でる。あまりそんな風に扱われるのは好きではないが、いまはとりあえず放っておくことにした。 「昼間のメール見た?」 「あ、あーなんかあったけ」  昼飯は食ったか、仕事はちゃんと行けたか――そんなようなメールだった気はした。内容は覚えていないが、添付されていた写真は覚えている。 「買い出しに出たら、通り雨が降ってさ。やっぱり今時の携帯って優秀だよね。綺麗に撮れてたでしょ?」  確かに三木から送られてきた写真では、晴れ間に虹が綺麗にかかっていた。――かかってはいたが、それをわざわざ写真に撮って送ってくるその感覚は、相変わらず俺にはよくわからない。多分きっと俺ならば、なに気なく通り過ぎてしまうだろう。 「でさ、帰り道にちっちゃい猫に会ったんだけど。これがまた先輩にそっくりでさぁ。つれないの」 「……」

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