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第12話 ライフ 3-1

「あれ広海先輩、今日休みだったの?」 「あ?」  帰ってくるなり、俺を見た三木は開口一番にそう呟き首を傾げた。そしてその言葉に俺が眉をひそめると、三木は目を瞬かせさらに首を捻る。 「だって眼鏡だし、普段着だから。仕事モードじゃない先輩久しぶりかも」  そう言ってソファでテレビを見ていた俺の背後に立ち、三木は身を屈めて俺の額に唇を落とした。そして鬱陶しげに顔をしかめた俺などお構い無しに楽しげに笑う。 「ただいま先輩」 「おう、遅くなるんじゃなかったのか」  いつも三木が遅いという日は、大概日付が変わってから帰ってくることが殆どだが、いまはまだ二十三時を回ったばかりだ。 「今日は意外と早くお客さんが引いたから。ちょっと早めに帰ってきた」 「ふぅん」  背後で動き回っている三木の気配を振り返ることなく曖昧に返事をすれば、ふいに気配が遠ざかっていく。だが然してそんなことは気にせず、俺は再び目の前の画面に視線を向ける。 「お疲れ様、俺」  しばらくすると三木はそう一人で呟きながら、缶ビールを両手に持ち、俺の横へさも当たり前のようにして座った。 「邪魔くせぇな」 「へへ、広海先輩とこうしているの久しぶりだね」  真ん中に座っていた俺を押し退けて座る三木に目を細めるが、機嫌のよさそうな顔で笑い、ちっとも悪びれていない。

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