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第42話 パフューム 3-3

 でも、広海先輩にそう言わせてしまった自分に嫌悪した。多分きっとこの人も不安なんだ。俺が離れていなくなる前に突き放そうとしてる。 「好き、広海先輩が好きだよ。俺、信じてもらえるまで、何回でも何十回でも言う。だからお願い、俺を捨てないで」  自分で言葉にして、思いきり傷ついてしまった。この人と離れなくてはならないなんて、考えるだけで胸が痛くて、悲しくて仕方がない。  好きと言葉にしてもらっていないけど、広海先輩に嫌われていないのはわかっている。あんな風に不機嫌になって、こうして目の前にはいない女の子たちにヤキモチ妬いて、不安になってくれるくらいは、想っていてくれているのは感じている。でも俺にだって不安はある。好きだから同じくらい好きでいてくれないと嫌だなんて、そんなことは言わないけれど――でも、不確かな関係が続いて、いつかするりと自分の腕の中から消えてしまいそうで怖い時だってあるんだ。 「広海先輩じゃなきゃ、嫌だ」 「後悔、しねぇの?」 「しない」 「……即答かよ」  抱きしめる腕に力を込めると、その中で広海先輩が肩を揺らし小さく笑った。それと共にゆっくりと背中に手が回され、肩口に微かな重みがかかる。  なんだか広海先輩がいつもより小さく感じた。そして抱きしめても抱きしめても、掴めないその感覚が拭いきれなくて、力任せに抱きしめてしまう。

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