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第45話 パフューム 3-6
そう言って俺のダウンジャケットのファスナーを下ろす指先に見とれて、思わず生唾を飲み込んでしまう。普段は絶対に触れられない広海先輩の匂いがする肌――それを想像して、心臓の鼓動がやたらと早くなってくる。ふっと笑った表情を目端に捉え、俺は着ていた上着やアウターを脱ぎ捨てると、見下ろしていた身体に覆いかぶさった。
「ボタン飛ばすなよ」
鼻先を首筋に押し当て匂いを嗅ぎながら、シャツのボタンを慌ただしく外す俺に、広海先輩は余裕の笑みを浮かべる。けれどそれに煽られるように俺が首筋に噛み付くと、一瞬ひくりと仰け反るように彼の喉が震えた。その反応に気をよくして、今度は首から顎にかけて舐め上げ、鎖骨をやんわりと甘噛みすれば、誘うように髪を撫で頭を胸元へと引き寄せられる。
「先輩の匂いだけでかなり悩殺されそう」
「お前やっぱり犬だな」
「もういまはなんでもいい」
香水の類は一切付けないのに、甘いようなこの香りはなんだろうか。服は同じ柔軟剤のはずなのに、彼の匂いが染み付いた服は肌と同じ甘い香りがした。しばらくその匂いに酔いしれていると、まるでその先を急かすように髪を梳き、うなじを指先で撫でられた。
「匂いだけでイクなよ」
少しふてくされたようなその声にまた煽られる。
鎖骨の辺りをきつく吸い上げて、紅い所有の印を二つ三つ白い肌に刻むと、履いたままだった彼の靴やコート、シャツを剥ぎ取るように奪い、床へと放り投げた。
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