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第34話 パフューム 2-3

 でもそれに調子に乗って頬にすり寄ったら、広海先輩の肘が思いきり俺のみぞおちに決まった。 「げふっ」 「調子に乗るからだ。おい、それより腹減った」  みぞおちをさすり、肩を落とした俺を横目に見ながら、不満をあらわにして広海先輩は口を引き結ぶ。  ああ、その柔らかい唇に触りたい――なんて妄想に浸りそうになったら、鋭い視線を向けられて現実に返る。いい加減、空腹を満たしてあげないと、本気でキレそうなところまで来てるかもしれない。とりあえず思いつく限りの店を頭に思い浮かべて、俺は急いでそれをふるいにかけた。 「行きましょうっ、美味しいご飯屋さん」  そしてピンときた店に俺は辺りをつけて、コートのポケットに突っ込まれていた広海先輩の手を取って、大股で歩き出した。半ば引きずられる形になった広海先輩の焦ったような声がしたが、とりあえず俺は目的地に向かい歩みを進めた。  結果――犬のくせに猪突猛進だとこっぴどく怒られた。  目的を決めたら前しか見えなくなるのは、昔から持っている俺の悪い癖だ。しかしこのおかげでこうして今、広海先輩と付き合ってるのも事実。当たって砕けろ精神で告白したのだから、あの時の俺は勇猛果敢だ。 「先輩、美味しい?」 「ん、美味い」  嬉し恥ずかし初デートだったが――あれこれ悩んだ末、おしゃれさは捨てた。とりあえず広海先輩の腹を充分に満たそうと、美味しさではダントツの定食屋を選んだ。

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