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第6話
男が足を一度摩って、溜息を付いた。
「悪ぃが、動けるようになるまで居ていいか?」
驚く様な提案にオレは男を見た。
申し訳なさそうに眉尻下げてるけど目は切実に困ってますを物語ってるようで、とりあえず理由を聞く事にした。
「全く知らん奴が家に居座るのに、それだけの説明で納得しろと?」
テーブルに朝飯二人分置いて、コーヒーも置くと男の横に行って腕を取ると昨日のようにオレの肩にまわす。
「とりあえず、飯食うぞ」
男は素直に従いながら、ソファーに座って話は続いた。
「怪我して、今住んでる寮には帰りたくない..治るまでで良いから置いて欲しい」
怪しい事この上ないが、拾った手前もあるし騙されたとしても盗まれるのは...大したもんねぇし、まぁいっかって気持ちで承諾した。
「解った、歩けるまでな」
「...助かる」
こうして、家に拾った人間が数日間住みつくことになった。
「んじゃ、とりあえず俺は〝りお〟」
松澤 りおって名前で、みんな下の名前呼ぶからそう言えば男は深く眉間にシワを刻みながら、何かを考えてるようで、ポツリと伝えて来た。
「クロ...名は、クロでいい」
「クロ?犬かよ」
パンを齧りながら笑えば、そうだなと、相手も笑った。
別にフルネーム必要でも無いし暇潰しにはなるだろうと、数日間の同居生活が決定した。
とりあえず今日は仕事が通しの日になる。
1日家に誰も居ないこんな状況じゃ、別に寝に帰ってる様なもんではないかと苦笑いが零れる。
「んじゃ、クロ悪いけど今うちの職場人たりなくて、9時には行ってないとだから、帰りは11時位なんで夜は寝てていいよ。」
そう告げて二人分の食べ終わった食器を流しへと運んでオレは家を出た。
クロは、多くを語ろうとはしなかったし、無口な方なんだろう…会話の端はしに生活を感じるものすらなくて、何者なのか...気にはなったが、深く追求しない事にした。
会社に着くと、オレはコピー機の前に立った。どうにか作り上げたシフトは半分が佐久間の希望通り、早番に切り替え早番の人を遅番に交代で何度か出てもらい、無理な日はオレと夏樹さんで埋めることが出来た。
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