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第16話
急にオレの項あたりに、ゾワリとした感覚と、懐かしい感覚。
セックスする時に項にキスするのが好きなやつだった。
佐久間思い出してどうすんだよ!
それより、オレの項で犬みたいにクンクン嗅いでるこいつは何なんだよ。
「りお...いい臭いするから、勃った」
腰が、オレの尻に押し付けられてクロが欲情を示しつつあるのを知った。
このまま、抱かれてもいい...
コイツのでかそうだし...そんなやましい事が頭を巡り、慌てて思考を切り替えた。
「なら抱き着くな、アホ。お前を相手にするほど飢えちゃいねぇよ」
飢えてんだけどね。
大人の余裕っての見せとかないと、このままなら佐久間の二の舞だ。
「飢えてるから、こんな事になったってのに?」
あ、藪蛇だった。
「オレは、もう...ノーマルの男は要らねぇの!それにお前、オレに欲情してんの?
偶然勃起しただけじゃねぇの?
こっちの世界はそんな半端な気持ちじゃ無理だかんな?お前は黙って女抱いとけ。」
強めに言ったら黙り込んだから、オレはそのまま目を閉じた。
お花畑であはは、うふふな夢をみた。
ヤバいな...クロとの距離が近い。
一緒に寝てる以外も、佐久間が泊まりに来た日みたいに、恋人見たいにくっ付いてオレもそれを許してしまう。
深みにハマりたくねぇのに。
完全に気持ち、傾いてるよ...こんなガキ相手に何考えてんだよオレ。
抱いてくれるなら誰でもいいのか?
うん、良いからあんな場所行ってんだけどね。
心の中で自問自答して、スッキリしたから布団から起き出て、クロの寝顔を見る。
月の光が差し込んで、クロの顔がハッキリと映る。
男らしく通った鼻梁、整った綺麗な眉。
開けばオレを引き込む瞳...完全に堕ちて行きそうだ。
唯一、会社で会う佐久間がオレのこの暴走を堰《せ》き止めてる。
同じ過ちを犯すなと。
それにコイツは、俗に言うイケメン部類だそんなのに女が近寄らない訳がないんだ。
佐久間が彼女を作ったのとオレと付き合い出したのと、ほとんど同時進行だったってのは今でも信じらんねぇけど。
それよりタチが悪い。
何せオレのドストライクなんだよなクロって...はぁ。
「ん...りぉ...」
名前呼ばれて、心臓が有り得ないほど震えた...ヤバいマジでヤメロ。
ダメだ、自覚はもうした!だから、せめて認めるなよ自分っ!
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