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第20話
佐久間が、オレに未練がましく手を延ばすから...
オレはその手を横目にそっと首を横に傾けてクロの頭を引き寄せた。
唇が...触れそうな距離。
あぁ、胸が熱い。
このまま、コイツと唇を重ねたら引き返せない気もする。
佐久間から逃れる作戦にと、考えたはずが、ミイラ取りがミイラになるとはまさにこの事か。
「りお...ちゃんと、キスして」
クロが、不意にそんな事言った。
雰囲気に飲まれたのか。
今まさにそんな雰囲気を二人で出してるからな。
とりあえず、フレンチキスくらい...許されるだろうか...完全に策に溺れてる。
オレはつま先を上げると、もう目の前どころか、肌が触れ合う位置だ。
はっ...と、興奮した呼吸に合わせたようにオレの腰が引かれ、内心でクソッタレ!と自制心のなさを罵りながらクロの唇に軽く唇を重ね、すぐに離れた。
「まだ、佐久間が居るからダメだ、がまんな?」
追い掛けてきそうなクロの顔からオレの唇を逸らしてクスクスと笑う。
「後で、していいのか?」
こらこら、真面目に聞くなよ。
ダメだからな?これ以上触れ合ったらオレが怖い。
でもこの状況では、そう答えられる訳もなく...。
「いいよ」
虚勢で伝えたら、佐久間が舌打ちを一つ。
「何だよ、りお!そんな男、顔だけだろうが!お前のいい所知ってんの俺だけだぞ?」
ギャンギャン吠える犬かよ。
ワナワナと震える姿に笑いさえ込み上げる始末。
オレはこの人の事本当に好きだったんだろうか?
そんな事考えてたらゾワリと背筋が慄 いた。
「んっ...ちょ、こら!クロっ!」
コイツ...耳舐めやがった。
思わず声出ちまったじゃねぇか!
「ね、はっ...待てない」
オレの腹辺りを服の裾から捲りあげて、抱き込んだ手が撫でてるしオレの腕も摩られ
てるし...挙句耳舐めたり髪や耳にキスを降らせてくる。
その動きはまさに、前戯のそれで...身体が熱を持ちそうだ。
「んっ、ちょ、クロ」
カリッ...と耳を軽く食 みその痛みに息が漏れる。
あぁ、だからさ不味いわけよ...佐久間がいる手前邪険にも出来ないし。
オレの下半身は期待で膨らんで来そうだし。
それにしても、クロはこんな色香も纏 えんのかよ!
「あんな男やめて...俺だけの〝りお〟になりなよ。」
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