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第25話
そうやって、頭悩ます程度にはクロの存在がオレの中で大きく育ってるんだと思うとげんなりする。
手放す事が出来なくなってからじゃ、遅いんだ。
そもそもに...オレ、コイツの事なんも知らねぇな。
ベットの上に横たわって、ソファーで座ってるクロに問う。
「なぁ、オレはおまえの名前...ちゃんと聞いてねぇわ」
コーヒー飲んでたらしくカップを置いてオレを見ると、スっと名前が零れた。
「...鏑木 黒人 」
なんか、カッコいい名前だな。
オレなんて平凡過ぎる。
「へぇ...野球は、会社の球団?」
「...答えなきゃ、ダメか?」
「答えたくないのかよ。まぁ、無理には良いけどさ。」
そう言ったら、クロもそれ以上は口を開かなかった。
そもそもコイツ口数すくねぇんだよ。
だから、良くわからん。
とりあえず、やる事ないし昼寝でもしよう!
「りお」
名前呼ばれて、クビだけ横向けたらクロが、真顔でこっち見てた。
なんだよ!?
「名前」
あぁ、名前聞くだけ聞いてオレ言わなかったっけ?
「松澤 りお」
「可愛いな」
...何のフィルターかかってんの!?
結局、一日ダラダラと過ごして終わってしまった。
あのメールの後、佐久間からの反応はまったくなかったから、のんびりとクロと約1週間を過ごした。
この大きな拾い物はいつの間にかオレに懐いてしまい、そして...感情を駄々漏れさせてる。
気分はいいさ。
何せ、オレの気になる男がオレを気にしてんのは何よりも嬉しいだろ?
でも、やっぱりノーマルにオレは引っかかるし多分付き合えたとしても...オレのこの性格じゃ愛され続けるなんて無理があんだよ。
顔は普通、背も、脳みそも何もかもが普通で、男が女に求めるらしい愛くるしさも、可愛さもオレには備わらなかった。
強いて言えば愛されたい願望だけは人一倍強くて、その愛に飢えてるから肉体関係で紛らわしている様なもんだ。
前の佐久間とは偶然仲良くなって、オレが佐久間の気さくな所に惚れた。
そして、佐久間はカミングアウトしたオレに好奇心を抱き、身体を触ってくるようになった。
佐久間がオレの初めてを、イタズラにかき回し、結果...
「悪ぃりお、彼女にガキ出来たわ」
その一言で頭は真っ白になった。
オレは、佐久間と付き合ってると思ってたんだが佐久間は何の躊躇いもなくそう言い放ったんだ。
彼女と、アイツは言った。
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