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第52話

やっぱり...クロは温かい。 「りお、好きだから」 「ん、ありがと」 「ガッツいて...悪かった」 抱き締めて、本当に言いたかった事は、これだろう。 「ん、良いよ...」 オレだって...そんなに強くねぇんだよ。 そこにあるクロの温もりはもうすぐ消えてしまう、この温かさが消えて無くなる。 クロを追うような事は出来ない、足も佐久間を蹴り上げた割には治って来ていると見て取れる。 一時的なんだよ。 「クロ...ありがとう」 「ん、ならりお...俺のもんになれよ」 「それは...出来ない」 「りお、りおが好きで、もう俺は他の奴にりおを抱かせたくない...」 そう言って、俺はまたベットに倒された。 もう終わりだと思った行為が頭をよぎる。 「ちょ、クロ?」 「俺の覚悟を軽く見るな...」 「なっ、やめっ...んっ...んんっ!」 まずいから、キスとかほんとまずいって! オレは出来る限りの力でクロを押し返そうとするけど、吸い上げられる舌が痺れ、心地良さを見付けた身体は力が奪われてしまう。 「も、これでいいだろ?りお...りおが感染してたら俺も、同じになる。」 「っ、ば、バカかよ!何やってんだよ!オレのせいでお前の未来刈り取りたくねぇって言ってんのに何でわかんねぇの? こんな無理矢理に、何でするわけ? もっと自分大事にしろや!」 はーはーと、息を荒らげながら怒鳴りつけてフッと頭を過ぎった。 その過ぎった事が正しいと、クロが追い打ちを掛けた。 「俺が、りおに言いたい事が、それだ。」 二の句を継げなかった。 オレはそんなに自分を大事にしたいとは思わない。 親から受け継いだ命だから、大事にしたいと思えば思うほど自分の柵に性癖に悩み苦しんだ。 セックスについては完全にオレは、自分を大事に出来ていないのは自分でもわかってる。 でも 「どうしろって言うんだよ!オレだって、人なんだ!苦しいんだよっ! 苦しいんだ...凄く、苦しいんだよクロ」 もう、自分の感情が溜め込んでいた腹の底から湧き上がって来て、涙は止まらねぇし、悔しくて身体は震えるし... 「りお、俺はずっとりおを見てた」 「え?」 オレ達は知り合ってからまだ、2週間程しか過ごしていない。 着々と治るクロの足に、嫉妬じみた思いまで感じていた。 けど、ずっと見ていたと言うのは、オレのそれとは質が違う気がする。 「覚えて...ねぇよな。」 そう言って、オレの横にゴロリと横になるクロ。

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