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第74話

激しい突き上げを受けて、意識が朦朧としていた。 クロは寄り添い、黙ってオレの髪を撫でてくれる。 はーはーと熱い息を吐き出して体内に吸い込む冷たい空気で身体を冷やせば、ゆっくりとオレの意識も覚醒する。 「ぁ、クロ...げほっ。」 叫んだお陰で声が出しにくかった。 「りお、りお...」 オレに擦り寄って来たクロに、オレは我に返った。 さっき...浮かれていた、まるでうわ言みたいに...吐き出した言葉。 「ちょ、クロ」 それに喜ぶクロ... 「りお、やっと...俺、やっときけた」 やらかした!!!!! まずい、これ訂正効かないよな? 「ぇ?な、に...?」 「っ...覚えて、ないのか?」 あぁ、痛々しい。 そんな悲痛な顔して欲しくないのになんでオレヘラヘラしてんだろ。 「良すぎて、クロとのセックスの相性はすげぇ良いみたいだな。 クロに抱かれるのは......」 ごめんな、クロ。 「すきだな」 弱虫でごめん。 心で泣いた...本当に泣きそうなのを、堪えて。 「そう、か...」 落胆してるのはすぐにわかった。 風呂に行くと、クロはベットから離れていく姿を黙って見送ると涙がオレの手に落ちた。 目頭が熱い。 「ごめ、クロ...ごめんな、弱くて...ごめん」 聞こえない様に、クロに謝罪を向けた。 何故この恐怖が抜けないのかは、オレもわからない。 クロが好きだと、素直に言えないのな何なのかも、分からなかった。 気持ちはもうクロみだけを見てるのに、オレの言葉はうまく噛み合わない。 そして、クロはそれに対して攻めもしなければ怒りもしなかった。 あれだけ熱く求め合ってなお、オレはクロをどうしたいと言うのか。 もうオレの中ではそばに居て欲しいと素直に思ってるのに。 そして、それ以来オレとクロは肌を重ねずに、出す時はお互いを慰める様に擦り合わせるだけとなった。 怖くて、オレから抱いてと言うことも気持的に謝罪感が強く出てしまってどうしてもぎこちなくなってしまっていた。 そんなある日。 オレは昇格して、責任者やりつつもクロとどうにかこうにか生活していた中... 部屋のチャイムが鳴った。 オレもクロも、来訪予定など無く首を傾げてドアを開けば。 スーツ姿の男が2人オレの家には不釣り合い過ぎるスッキリした、イケメンだ。 「はい?」 「鏑木はいますか?」 その名前にオレは一気に血の気がひいた。 この生活が、壊れてしまう恐怖に慄いた。

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