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第75話
そう、オレは感じていたんだ...クロの足は今は違和感を残すだけとなってて呼び戻される事になるかもと。
それが、今...なのか。
震える手とは正反対に笑顔を貼り付けてオレは口を開いた。
「居ますよ、呼びますか?」
2人は、お願いしますと言うからオレはクロを呼びに部屋を振り返った。
「ん?」
目が合って、首を傾げたクロに頑張って言葉を掛けた。
「客、お前に」
「ぁあ、わかった。」
何でもないように立ち上がり、オレの横を通り過ぎると、男二人の声が聞こえる。
「鏑木!ほんとに人の家で世話になってんだな」
「うちでも面倒みれたのに」
やめてくれ。
オレからクロを取り上げるな...
オレは、こんな追い詰められなかったら寂しくなる事さえ伝えられない臆病者かよ。
「りお、ちょっと出てくる」
クロが居なくなる。
やだ...
「わかった。」
そう、答えたのにクロはオレの背後から動かない。
「早く行ってこいよ」
「...手」
そう言われて...オレの手がクロの服の裾を掴んでる事に驚いて手を離した。
「っ、あ...わ、悪ぃ、気を付けろよ」
そう言ったら、抱き締められた。
オレなにやってんだよ...ほんと。
「2時間で戻る」
耳元でそう言い残して、クロは居なくなった。
広い部屋に一人...今はそんな気分だった。
「情ねぇなぁ...」
あれだけ拒絶したクロが居なくなって知る寂しさは途方もなくて、だんだん離れていった佐久間の方がまだオレの心に、余裕を作ってくれてた。
あんなにベッタリしてたクロが離れてしまって、そして、こんなに深い悲しみが襲ってくるなんて思わなかった。
オレは、美味しいシチューでも作って待っていようと、財布と携帯を持って部屋を出た。
クロに鍵を渡してないけど、2時間なら買物して帰っても、余裕があるからと靴を履いて部屋を出る...
ダメだ、本当にダメなんだ。
あの家で一人だと、耐えられない。
クロが待っていないあの家でオレは1人過ごす事に、今はもう耐えられないのだと思うと胸がひどく傷んだ。
だから、認めたくなかった。
くらい夜道になる前にと、買い物を終わらせてオレは帰宅したらやはりそこにば誰もいなくて落胆する。
解ってる。
クロはいなくなる人間だ。
シッカリ刻み付けろ、オレ自身が揺らいでどうするんだよ。
松澤りお...あの苦しみを忘れるな。
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