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第78話

それから残酷に日は過ぎ去り、1週間。 クロは連絡さえも寄越さず、オレはどうしていいのかさえ、わからなくなった。 会いたい...とても。 他の奴とセックスすれば気が紛れるかとも思ったが、触られるだけで嫌気がさして。 そして、触られた瞬間には必ずクロがオレに言う。 「りおの性欲は俺が満たす」と... なんの呪いだよ。 相手が見つかってもこれじゃ...何も出来ない。 オレそんなに一途じゃなかったのになんでクロに拘ってんだ? それから、また数カ月と時間が過ぎてもオレの心は宙に浮いたままだった。 オレを置いて出ていったクロなんて忘れてしまいたい...そう思ってたのに、通りかかった道すがら、イヤホンが壊れたから電化製品を取り扱う店に入って固まった。 クロが、あんなにも輝いて野球をするなんて知らなかった。 「...1軍かよ」 テレビに写るってことは、そういう事だ。 アイツは手の届かない所へと、行っちまったんだ。 アナウンサーが、興奮気味にクロの苗字を何度も言ってて泣きたくなった。 “今回一軍に上がった鏑木、足の怪我のために療養していたが、今回から起用される事となった” とか何とか。 てか、ヒビならまだダメだろ? アイツ、嘘かよ... 本当にもう何も信じたくねぇな。 夏樹も最初はクロはそんな子じゃないと言ってたが今は新しい講師の男がそこそこにイケメンでオレを狙ってる気がすると妄想に沈んでた。 その男と上手く行けば...と、グイグイ推してくるけどオレはクロが... 大事なのだ。 オレはクロがいい。 そうしてオレは半年を過ごした。

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