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第79話

なんでとか、どうしてとか...考えたら苦しくて、クロが消えた理由は、迎えが来たからだと言い聞かせた。 それでもクロはオレを忘れないでいてくれると勝手に思い込んでた。 思う事なら勝手だろ? 裏切られたとか捨てられたとか...そんなんじゃないのだと、あの数週間を忘れたくなかった。 そんなある日、クロの特集が載ってる冊子を腐女子代表の夏樹がオレにくれた。 「松、あのクソガキあんたを忘れてないよ」 そう言われるとなんだか嬉しくなってはにかむようになった。 「なんで?」 「特集、読めばわかるよ」 表紙には、キャッチャーガードを付けたクロが、フライを捕った時の写真。 上を向いた横顔は少し幼さが抜けていて、オレの胸もきゅっと締め付けられる。 ペラリと捲れば椅子に足を組んで座る正面の写真。 スーツが嫌に似合ってて知らない人かとさえ思う。 その次のページには、数枚の写真と対談のやりとり。 その、一部にピンクのラインマーカーで線が引かれてて、自然と視線が向く。 対談A:はは、本当に無口ですね、では恋愛はどうですか?今の鏑木選手ならよりどりみどりですよね! 鏑木:恋愛はもうしてるし、好きな人もいる。泣きぼくろ付きの大好きな人。 対談A:おおっ!それは!綺麗な人ですか?一般人とか?昔マネだった人とか? 鏑木:いや、全部違う...一般人だけど、今は会わせてもらえないから、会うためにやってる。 対談A:えっ!?会わせてもらえないって、球団がそういう対処してるんですか? 鏑木:...俺のためだと、言ってたが納得はしてねぇ その文章に涙が溢れた。 バカだな、クロは真面目だから...言いつけ守って、色々やらされてんだろ。 泣きぼくろ...あって良かった。 流石にオレに当てはまらない事言われてたら、本気で泣くぞ。 今は遠いクロ、でも思ってくれてるなら、オレも...好きだとクロに言いたい。 「松、どう?あのクソガキ、どう見ても松の事言ってるよね?」 いつの間に忍び寄ったのか...夏樹がそばに居た。 怖いぞ、足音しなかった... でも、まあ...教えてくれたしな。 「あ?あぁ、そうだと良いけどな」 そう言ってクロの姿を指でなぞった。 「うおぅ!?松がデレた!」 いきなり叫んだからため息付いて、突っ込んどく。 「そもそもツンデレじゃねぇし」 「ツンデレだろ」 「ちげぇし!」 「世間のツンデレに謝れ!」 「...解せぬ!」 オレはいつも夏樹に負ける...クソ

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