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第80話
もう少しで、シーズンオフの時期がきた。
もしかしたら、会いに来てくれるかも知れない。
そんな期待を持てる位オレはクロを大事に思った。
伝えられなかった、クロへの思いは...こんなにも育ってオレの胸の中にある。
会ったら...会えたら...好きだと。
そう、素直に言いたい。
もう振られても良いなんて、臆病なオレには言えない言葉だと思ってた。
何のことは無い...こんなにも心を捕らえる恋愛はしたことが無かっただけの事だった。
思いは、いない間に成熟してオレは自分の気持ちをシッカリと認めてしまった。
「まさか年下にここまで気持ち持ってかれるなんて、思ってなかったよ、バカクロ」
そう吐き捨て俺は冊子を閉じた。
ゆっくり目を閉じてクロに抱かれて眠ったあの温かさを思い返す。
もう、半年以上会えていないのに、オレは自分で欲望を抑える術を知った。
クロが、幾度も刻み込むようにオレを抱いた記憶だけで、自分の心の乾きを払拭出来る。
自宅に戻って、オレはいつもの様に部屋に入り「ただいま」と、誰も居ない空間に呟くと、今日買ってきたクロの特集冊子を買ったばかりの袋から取り出して机に置いた。
風呂に入り卵を目玉焼きにしてぷっ。と吹き出した。
「アイツ料理出来ねぇからなあ」
そう呟いて、フライパンの上に卵を落とし周りが白くなったら、水を少し足して蓋を閉じた。
じゅうじゅうと、油の跳ねる音を耳にしながらインスタントの味噌汁にお湯を入れた。
火を止めて蓋を開けると、半熟の目玉焼きの出来上がりだ。
オレはフライパンから皿に移してその場で醤油を垂らして味の素を振りかけ二つを運んで机に置くと、次に箸と白米を運んで頂きます。
飯を口に運んでも、やっぱりクロの写真を見たくて、自然と口に運ぶスピードも上がる。
食べ終わると急いで片付けてから、濡れた手を拭いて、やっと一息。
ペラリと一枚目を開くと、クロの笑顔に目眩がした。
「いい顔しやがって...」
野球をするのが本当に好きなんだなと、思いながら次のページを開く。
衝撃的な、上半身裸で片手は背中側、もう片手はボタンを外し半分までチャックを下げたジーンズのポケットに親指を引っ掛けた、オレから見たらエロい写真。
「何芸能人見たいな事してんだよっ!」
そう、怒りをぶつけるしか出来ない。
そんな時、オレの家のチャイムが響いた。
クロの写真に視線向けて閉じてから、玄関へと向かった。
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