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第84話
くしゃる!
えっ!?何語!?
いきなりの夏樹の声に驚いてれば、夏樹が頬膨らませて俺を見てた。
なんか可愛いな。
やっぱりノーマルなら夏樹はオレのどストライクだったんだろうなと、こういう時本気で思う。
でも今は心も動かなければ可愛いな以上の感情も湧かないし、何よりもオレは自分が求めてるのは、クロだと認識してしまってる。
「残念イケメン腐女子...だな。」
俺が笑っていえば首を傾げた。
「なによそれ!」
そしてみるみるうちに般若顔。
「ん?夏樹可愛いしモテるのに腐女子で俺ばかり追い掛けてるから、残念だろ?」
「言い得て妙だけど...そうね。オトコなんて男を抱いてればいいのよ!」
そこまで行くと、怖いよ、夏樹ねーさん。
「なぁ、何でそんなにホモが好きなんだ?」
「それを聞く!?私っ!実は兄貴がゲイで、オトコにしか反応しないんだって...で、思春期真っ最中だった兄貴は悩んだわけ...兄貴あんまイケメンでも無いし可愛い部類でもないから、せめてまがい物でもって...平凡な顔のくせに、胸っ!作って来たの!」
あー確かに、男同士って確率的にもそうそうマッチングなんて無理だしな。
クロが俺を見付けてくれなかったら、未だにビッチだったろうし。
兄貴についてハアハア語り出したので聞いてる振りして、クロの事考えてた。
もう少しで、会える。
それだけが凄く嬉しい。
オレが一人でニヤニヤしてたら、いつの間にか夏樹の言葉が止まってた...
「聞いてなかったでしょ!?」
サーセン!
「ま、クロちゃんに会えるんだもん、そんな緩んだ顔になっても仕方ないか」
なんでそんな図星を突っつくんだよ!
「た、楽しみなんだ」
「わかってるわよ、当日頑張ろ」
「ん...」
そして一夜は過ぎていった。来月の...試合が楽しみで毎日仕事に、力も入ったし、目標あるって、いいんだな。
オレはこんな生活したことなかったから、なんかとても新鮮だ。
仕事も思いのほか捗ったし、眠りも前に比べて深くなった。
クロの影を追って夜中に目覚めたことも1度や2度ではない。
そんな中で舞い降りたチケットに浮かれない訳がないだろ?
待ち望んでいたら日にちの経過なんてあっという間だった。
「クロ...会ってくれるかな?」
知らん振りされたら辛いな...なんて思った。
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