93 / 107
第93話
なにやってんのこの人達...
額突き合わせてグルグル唸る、縄張り争いの犬か!?
「クロちゃんが、あんな裸体晒すから、松は私のにするっ!」
雑誌のやつか...まぁアレはエロかったな。
てか夏樹は男と付き合うより愛でるのが趣味だろ。
「ふざけるな、俺のだ!」
お?クロ...俺のだって言ってくれるんだ?
「なら何で、迎えどころか、電話も手紙も無かったじゃない!松は、凄まじくドン底だったんだからねッ!
そこに突き落としたのはアンタよ!」
うわぁなんか恥ずい...てか、ホントそれ...
「球団が許可しないから行けなかっただけだ!」
クロが思いの外、怒ってんな...
「なら、球団がホモ禁止したら松を捨てれるのよね?その程度の奴に私の大事な松はあげないっ!」
あれ、なんか俺愛されてる。
てかホモ禁止って...夏樹さんは、ここに他のクロの仲間いても構わずに言うのか。
「夏樹...も、良いから落ち着け」
オレが夏樹の暴走を止めようと肩を叩いたらその手が引かれた。
「なんだよ...」
クロがオレの手を止めたのだ。
掴まれた手から感じる温かさは、あの時と変わらず、熱情に溺れる様に身体を重ねたあの頃をふと思い出す。
「なんだよ、何なんだよクロ」
好きだと思ってしまえばもう感情は止まらず、ただ、ただクロが欲しい。
「りお、りお...黙っていなくなってごめん」
そう言ってオレの頬を撫でるつもりか、手が頬に向かってくるのを触られたい気持ちを無視して避けた。
「黙ってじゃねぇ...2時間って、出てったろ。それ信じて馬鹿みたいに、シチュー作って待ってた」
そうだ、あんなに待ったんだよ...
「うん」
「夜も寝れなくて、連絡先も分からんくて」
泣いてやるもんか...オレはこみ上げてくる泣きたい感情を堪えて、深呼吸する。
「うん」
「...寂しくて」
「うん」
「ばかっ、帰って来ないならそう、言えよ...ひとりで待ったんだからな、あの家で、待ったんだからな...」
恨み言しか出て来なかったけど、待ってた...すごく待った。
深呼吸して落ち着いてるはずなのに、ポロポロ涙が落ち始めて、情ねぇと袖口でその涙を乱暴に拭った。
「りお、不安にさせてごめんな」
そう言って、クロの厚い胸板にオレはすっぽり包まれた。
懐かしくて、温かくて、オレはその胸板に顔を埋めた。
「クロのバカ!あほ!」
「りお...大好きだ。」
────オレもだばーか────
ともだちにシェアしよう!