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第94話
えっぐ、えっぐと不細工な泣き顔のオレと、そんなオレを涙ぐんで見てた夏樹を引っ張りこんだ。
「うぁ!?松?」
と、よろけながらオレとクロに挟まれて、まるで魔の三角地帯...デルタゾーン。
「りお?」
不思議そうに首を傾げるクロにニヤリと渾身の不敵な笑みを送った。
「夏樹はオレの彼女だ、そしてクロが彼氏だ...夏樹とは恋愛感情抜きでオレらを見守る義務があんだよ、そいつに嫉妬するバカなクロは夏樹に感謝しろ!
オレは...オレは他のやつに身体開いてねぇからな。
夏樹が、お前の雑誌持って来なかったら、オレら今ここに居なかったかもしれねえんだかんな!」
とりあえず、ずらずら並べてやったら、またもや美女の頭をこれでもかってくらい撫で回し始めた。
「鏑木が、女撫でてる...え、ホモじゃねぇの?」
耳に届く言葉に、どれだけこいつは周囲にホモ認定されてるのかと思った。
「俺の彼女の夏樹だ、こっちは彼氏のりおだ」
待て待て、何でお前まで夏樹と付き合ってんの!?
そう突っ込む予定だったけど。
「クロちゃんの体力に女の私は付いてけないから、ごめんなさい!」
ぶっ、振られやがった。
と、思ったら夏樹がオレを見て頭を下げた...え!?まてまて。
「女に勃たない彼氏は要らん!」
夏樹が怖い...酷くね?いや、確かに勃たねぇけどさ?
振られた二人を指さして笑う球団の人達に送り出されてオレはクロと帰り道を誘導してもらう。
とりあえず一度帰って、後から連絡をくれるとの話になったのだ。
手にはクロから貰った、電話番号...
それが今まで無かったクロとの繋がり。
帰りの廊下は既に人は居なくて、カチャカチャとクロのスパイクの音が響く。
あんなに燃えて応援していた人達の姿はもう無くて、選手のクロとのオレと、夏樹。
最後尾を歩いてたら、急に肩が引かれて丸みのある廊下の角にクロに引き込まれたと思ったら...
「んっ!?んんっ?」
帰る前...廊下で少しだけのキスをされて、オレは迂闊にもその唇の熱に腰を抜かした...。
ずるりと、押付けられた壁に背中を預けて、ズルズルと尻が床に向かって落ちて行くのをクロが片手で止める。
「ちょっと!!なんで見てない時にイチャコラすんのよ!信じられないっ!そして、一瞬で腰抜かしてる松はなんなの!?」
夏樹にさんざん馬鹿にされた。
クソっ。
携帯に、クロと名前を入れてオレはその名前を指でたどる。
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