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第95話

好きな人の...名前が入っただけでこんなにも胸がキュンキュンするなんて思ってもなかったわ。 はぁ...と、クロに会えた喜びなのか、沢山詰まった胸の中の息を吐き出せば、横で座っていた、夏樹がニヤリと笑った。 「クロちゃんも、過保護よね...弁当みんなで食べるって言ったら、怒り出すし、かと思えば、松の横に誰も座らせないし、そして極めつけは...このタクシーよね」 オレは小さくなるしかできなかった。 クロに抱えてた弁当が見つかりみんなで食べようと、提案したら、一人1つしかダメとか言い出して先輩達にど突かれてた... そして、クロはいじられる体質なのか知らないけどオレの横をクロ、逆に夏樹が座るように指示を出したが...先輩達が、夏樹は可愛いから許す振られ男は黙ってろ!と言われて、熟年バッテリーの間に座らされてしまい、オレの横が空いた。 そこに座りたいと候補して来た外人バッターさんと、外野守ってた人がやって来てクロともちゃもちゃやってた。 楽しかったし、オレも笑ったし...でも、クロは不貞腐れっぱなしで可愛かった。 オレの泣きボクロが好きだと豪語しだした、ケインとか言う外人さんにクロがオレを抱き締めてダメだから!と、連呼してた...。 なんか、アレだけ悩んでたオレなんなの? そんなポカーン状態の中、みんなで弁当摘んで、夏樹が腐女子パワー炸裂させて、大騒ぎだった...。 で、ひと通り笑って、暗い道を帰したくないからと選手のためのタクシーを横取りして乗せられた...クロ、お前の仲間だろうがと、言いたかったが、夏樹は平然と乗り込むからオレも乗って今に至る。 「良かったね、松」 「...ん、」 同意するのでも恥ずかしいんだよ!何だこの乙女回路っ。 「あーあー、嬉しそうにしちゃって」 「...うるさい」 大きな声で反撃できねぇ。 自宅に着いて、夏樹はクロの金だからとそのまま乗って帰った...現金なヤツめ。 家に帰り着くとなんか夢だった気がするなんてホントになんなんだこの、胸の切なさ... こんな恋愛した事ねぇし、初めて知ったし、どうしていいか解らなくて... ベッドに、ダイブして枕を抱きしめた。 「はぁ...カッコよかった...」 ハッと我に帰って、慌てて枕ぶん投げた...

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