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第96話

な、何が起きた...!? なんか、野球ファンが選手に会って抱き締めてもらえてきゃぁきゃぁしてる、女性の心理って奴か!? 止めてくれ!コレでも一応男だぞオレ! なんか、悶々してきて眠れんくなった... ってもまだ、寝るには早い夜の9時だが。 「あのバカ、キスなんてするからだっ!」 責任転嫁もいいところ。 もうなんでも擦り付けてやる。 「そもそも、オレが好きなら連絡くらいさっさと寄越せよなバカ!」 今まで会いに行かなかったのは自分。 「連絡くらい取れるだろうが!」 探さなかったのも自分。 「...もっと、早くに会って抱きしめてもらいたかった」 ハッ!また、乙女回路がでやがった! 「うーっ!クロの馬鹿野郎っ!好きだー!」 もうオレの中ぐちゃぐちゃだよ。 どれだけかき回せば気が済むんだよあいつ...。 いや、好きになったのはオレだから仕方ないんだけどさ。 「はぁ...」 もう、溜め息しか出ない。 好き過ぎて苦しいんだよ... そんな、一人悶絶してたら... ピリリ...ピリリリリ... 携帯が鳴って、飛び起きた。 滅多に鳴らない、電話...ベットの上で、悶々しながらほおり投げてた携帯が、今音を上げていて、恐る恐る携帯を持ち上げて表示画面を見た。 “ 鏑木黒人” あ、クロだ。 横に線を引くだけで、クロの声が聴けるのに、なんか心臓バクバクすんぞ!? 「も、しもし?」 勇気を出したら、まだちゃんと受信出来てなくて、オレのもしもしはクロの耳に届かなかった...恥ずいわ。 慌てて、スライドして耳にあてた。 “ りお” オレを呼ぶクロの声はやっぱり低くていい声だ。 「ん、クロ...久しぶり」 “ さっき会ったろ” 「...こうやって二人で話すのが、久しぶりだなと思ってな」 思わず出てしまったんだから許して欲しい。 本当に二人で話すのは久しぶりなんだよ。 “ 会いたい...” こいつはオレを殺す気か!? オレだって...会いたい... 「お、オレも...会いたい」 “ りお、ほんとにりお?” こいつさ、失礼じゃね?なんでオレ疑われんの!? 「オレ以外がこの電話に出るかよ」 “ 俺に会いたいのか?” 「っ...」 会いたいよ...凄く。

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