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第98話

ゆっくりと目を閉じ... 「明日、会える...」 その喜びを胸に、眠った... 朝目覚めて掃除機をかけてから出勤。 そして今、夏樹と睨み合ってる。 「だ、か、ら!邪魔はしないわよ!」 「断じて断る!」 なんの押し問答かと言えば... 「じゃ、携帯の、つ、通話の音だけでいいから!」 目を血走らせてオレの目の前に顔を突きつけてくる。 「夏樹...流石に怖いだろそれ」 そしてオレも引かない。 「いいじゃない!見るわけじゃないんだから!」 俺と、クロの再会のシーンを撮影ご希望でしたが、そんな画像流失はマジでやばいし、夏樹が見たがってるだけなら来いと言えば、自分がいたら何もしないだろうと文句...どうしろと!? 「...松澤先生と、夏樹先生って付き合ってるんですか?」 新任の先生が聞いて来たから夏樹に親指であっちを何とかしろ!の合図としてグイグイ指をさしたら溜息ついてその人の方へと行ったのをいい事にオレは夏樹に会わないで帰る算段をつける。 とりあえず、昼が終わればオレと夏樹はほとんど会わないからと、油断してたら帰り際に靴箱の中にICレコーダー。 おもむろにスイッチを押して、赤い録音マークが色を発したのを確認して、一つ咳払い。 「夏樹...悪いけど、クロとの再会は録音できない。 オレは、何言い出すか解んねぇし夏樹に聞かれるのも嫌だから。 だからゴメンな、これは持って帰らない」 そう吹き込んでボタンを押す。 そして夏樹の靴箱の中に...なんで、手紙? しかもオレ宛て... 松へ 断られると解ってるので気にしないで! でも、根掘り葉掘り聞くから覚悟しといてね!夏樹 読まれてた。 一瞬の時間だったはずなのにごっそり体力奪われた気分で、帰路についた。 戻る道すがら、クロを拾った場所に差し掛かる。 半年...見たくないと避けて通ったこの道を直視できる日がいつか来るとは思ってたけど、まさか今日がその日になるとは。 クスッとひとつ笑って、その角を通過し家の近くのスーパーへ寄った。 シチューの材料を入れて、オレは酒売り場でシャンパンを手にして会計を済ませ帰宅。 いそいそと、用意を初めた瞬間にあの時の、クロが戻ると言った日のことを思い出した。 思い出したくなかったけど... オレはあの日もクロに食べてもらう為にシチューを用意していたんだよ。

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