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第99話
切なくなりながらも、材料を切って鍋で煮込んではため息。
もう、あいつに会うまで止まらないだろうな。
そして、飯も出来たしオレはそのまま風呂に入り全てを綺麗にしてから、ベットに座り、時計を見る。
約束まであと30分以上だ。
皿を出して、シチューを掬いあげてから冷えてしまうと気付いて、何をやってるんだと笑う。
「ほんと、クロと会うだけで何こんなにソワソワしてんだよ...恥ずかしい」
片手に掬いあげたシチューをそのまま戻してもう片方の手で持った皿を元に戻して、部屋へと戻った。
ベットに座って...立っては部屋うろついて、また座って。
ほんと、なんで落ち着けないのオレ!?
そして運命の時間だ。
本当にきっかりだった...家の前に何秒か前に着いてて、ぴったりの時間に合わせて押したかのようにぴったり。
オレはベットに座ってられなくて、結局玄関前をうろついてたから、チャイムの音で思わず小さな悲鳴を上げたが、聞こえてないだろう。
「はい...」
ドキドキする心臓を、手で抑えながら平静を装い声を掛けた。
「...俺」
あぁ...来てくれた。
ちゃんと、約束通りに...
鍵を、開くに回したら一気に扉が開いてオレの体はバランスを失った。
冷たいコート、外の香り、大きな胸板、オレを抱き止めたままでその大きな身体に押し込まれるように部屋へと入った。
「ちょ、ク、転ぶって、ちょ」
靴も、しっかりと脱げないその場所でオレはクロに抱きしめられたまま、玄関とキッチン、ふろ場に行く部屋へ続く一本道の廊下に尻餅を付いた。
「りお、りお...りお」
ただ、ただ、胸がギュッと締め上げられて、いつものうわ言みたいなクロの声に涙が溢れ返った。
「っ、クロッ!」
思わず抱き返したら、クロのオレを抱きしめる腕に力が篭った。
求めていた温もりに、抱きすくめられて心が軋む。
嬉しいのか、悲しいのか、寂しいのか...今の自分の感情からは読み取れなくて、そのわからない感情に支配される恐怖をクロに抱き付く事で、消した。
「はぁ...りお、会いたかった...」
「お、おれ...も」
そう答えるのが精一杯で、でもその言葉にクロは答えるように、オレの頭を押さえてクロの首筋にオレの鼻が引き寄せられた。
クソっこいつ香水付けてやがる。
ムスク系の、こってりしてるの...それなのに甘すぎない...いい香りについ鼻先を首筋に擦り付ける。
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