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第101話
でも、暖かいシチューが口の中でホロホロと甘みを広げて、かき混ぜすぎた芋が、噛み砕くと熱を口の中に広げる。
「あふっ、はっ」
オレがはふはふと食べるとクロは思いの外慎重に皿で割ってから口に入れてた。
「...りお、ごめん、こんなに会えなくなるなんて思って無くて」
ある程度食べた時、その言葉がクロの口から零れた。
オレはスプーンの手を止めて横のクロをジッと見る。
オレが...意地を張らずに付き合うと言えていれば、あの時、付き合っていれば...
「オレ、凄く寂しかった...」
そう言って口にシチューを入れた。
「うん...ごめん」
「クロが謝ることじゃねぇよ...」
そうだ、クロが紡ごうとした糸の端を指先から零れ落としたのは...オレ。
「会いたかった」
「オレも、会いたかった...お前に」
なんでかな、素直に出てそのあとオレもクロも何も言わず無心で食べた。
皿洗いはクロがしてくれて、オレはその間ただソワソワするだけだった。
「りお」
「ん、ありがとな、お疲れ様」
タオルで手を拭きながら戻ったクロに言えば、クロはオレの横にドサリと座った。
あぁ、なんか凄く心地いいなぁ。
クロはオレが好きなのかな...まだ、こんなひねくれたオレを思ってくれんのかな?
いつも、ちゃんと聞くことを避けてたからなぁ。
「クロ...だっこ」
横に居るのに甘えたくて両手広げたら、クロが破顔してオレの身体を正面から抱き留めてくれた。
「いつに無く可愛い...」
そう言って耳にキスされて、オレは猫みたいにクロの頬に自分の頬をすり寄せる。
「クロ、温かい」
「生きてるからな」
そう来るか。
クスクス笑いあってキスを互いに挨拶かのように...いや、今まで離れていた時間を埋めるように。
「りお、好き」
はぁ...と、興奮気味に紡がれた言葉にオレは胸を縛り付けられた。
「オレも...」
モゴモゴしてしまって、クロには伝わらなかった。
「え?なんだって?りお?」
恥ずかしくて、変な汗が出てきた。
「オレも...好き、クロが」
そう、やっと口にする事が叶った。
オレの気持ちはクロに囚われて、もう、どう足掻いたところでこの育った思いは変えられない。
そして、オレはクロをこうやって縛る事も本当はしたくなかったのかも知れない。
自分の中の大事な言葉を今。
クロに
「好きだよ、クロ...ずっと好きだった」
伝われ。
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