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第4話
これだから昔の知り合いというのは厄介だ。思い出したくないことを引っ張り出してくるんだから。
「お前は結婚してるみたいだな」
左手の薬指を見ながら話題を逸らす。視線も逸れて、彼の目は自分の指輪に向けられた。
「それこそ、もう10年になるよ。子供も2人いる、6歳と3歳」
またくしゃっと笑った。
「へぇー、そりゃあ幸せだろうな」
心にもないことを言いながら、とりあえず微笑む。
「いやぁ、まぁ、普通さ。昔と変わりないよ、あんまり」
「変わりあるだろさすがに」
「うーん、あまり自覚はないけど」
妻とは今の勤め先で出会ったとのことだった。パートに出ながら子育てしているという、本当に絵に描いたような家族構成だった。
「お前は? 結婚してるのか?」
厄介な話題を振り返された。
「俺は独りもんだよ」
そのまま返すと
「誰かいい人いないのか?」
テンプレートのような返しがくる。
「いないね。作ってない」
「そうか、誰かしらいそうなのにな」
「まぁ、困ってはいないさ」
「そうか」
会話が一旦途切れた。彼は上着を脱ぎながら、まぁ、とため息を吐くように言った。
「いろんな人生があるからな。その腕見ると思うよ」
そして、竜の鱗の描かれた俺の腕を見るのだった。
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