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第6話

「え、聞いてないのか? 今話した通りなんだけど、兄さんパン作ってる兄さんってどんな人なのかって取材依頼したんだけど?」 「……あの野郎……」 思えば取材がどうのとは聞いていたけど、具体的にどういう趣旨のどんな雑誌かとか、後輩に全く聞いてなかった。 聞かずに来た俺も悪かったけど、そもそもどうしてそうなった経緯を全く知らされていない。 軽い気持ちで来たのを後悔する。 「ほら、これだろ」 プリントを見せられる。 俺の作ったクロワッサン、ついでに作ったチョココロネとアンパン、それを持つ俺の手の写真が、SNSの画面とともに印刷されていた。 「……何これ」 写真を見ながら呟く。 随分キラキラに加工された写真に、俺の刺青の腕がとんでもなくアンバランスだった。しかも全部の写真に俺の腕が写っている。 ---兄さんはーい!写真撮るからパン持って~! スナップ写真のように撮っていたのを思い出す。こっちも何の気なしに撮られてたけど、こんな展開になろうとは。 「待った、あのな、俺全然聞いてなかったんだよ、その、投稿した奴からさ」 あわてて弁明する。 「そのー、写真撮ったのも載せたのも飲み友みたいなもんなんだけど、いきなり取材がどうのこうのって言い出して、しかも今日一緒に来るような話してたのにバックれやがって、全然展開が読めてないっていうか」 「えっ、そうなのか?」 それでお引き取り願えないかと思ったが。 「まぁほら、写真を載せたのはその飲み友だろうけど、写ってるのもパン作ったのもお前なんだろ?問題ないさ」 向こうも仕事だ。そう簡単にはいかなかった。

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