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第8話

「よし、これだけ情報が集まれば十分だ、ありがとう」 写真も撮られ、顔が写ってないことを確認し、インタビューを終えた。ちょうど1時間というところだった。 「精一杯、いい記事にしてやるから」 爽やかに微笑む。昼下がりのカフェに似つかわしい、柔らかな笑顔だった。 それに比べて俺は表情筋がないみたいに無愛想だった。 「ま、好きに書いてくれ。じゃあな」 用が済んだから帰路につこう。少しふらついて、いつものバーで一杯やって。 これからの予定を頭に浮かべながら席を立つ。 彼に連絡先を聞こうという気は、これっぽっちもなかった。 「おいおい待てよ、せっかく会ったんだし、もう少しゆっくり話さないか?」 声をかけられなければ、そのまま立ち去っていただろう。 「ゆっくりって、俺はともかくお前は仕事の途中だろ、ゆっくりしてられるのかよ」 スーツ姿を見ながら言うと、少し慌てながら今じゃなくて、と返される。 「今夜空いてないか? いい店知ってるんだよ」 手首を軽く曲げる仕草をした。 「強かっただろ、昔。久しぶりに飲まないか?」 「……」 「奢るから、もうすぐボーナス出るし」 全然乗り気ではなかった。とはいえ、人の誘いを無下にするのも得意な方ではなかった。 「じゃあ、少しなら」 結局、成り行き任せみたいな返事をしてしまっていた。 「本当か!よーし、じゃあ今夜な、本当に久しぶりだよなー、楽しみにしてるよ!」 目を輝かせる様子を見たら、悪い気もしないのだった。

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