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第10話
酒の注文と同じくらい適当に、肴を数品注文した。
久しぶりの再会の話題は、同級生の結婚から学生時代の他愛ない思い出話まで多岐に渡った。
別に知ったところでどうってことのない話題ばかりだったけれど、話を合わせるくらいのことはする。
どの皿も半分くらいに減った頃には、3杯目の酒を注文していた。
「はーあ、やっぱりいいな、昔の話が出来る相手って必要だな」
「まぁたまにはいいかな」
「だろ?またたまに飲まないか?」
「本当にたまになら」
とは言いながら、本音を言うとあまり乗り気ではない。我ながらどんだけ冷めてんだかって感じだけど、別に過去に思い入れもない。
気づけば時刻は午後10時を回っている。俺みたいなフーテンはまだまだゴールデンタイムだとしても、妻子持ちがこんな時間までフラフラしてていいのかな。
「帰んねぇの?」
店の時計をチラ見しながら唐突に尋ねる。彼の表情がキョトンとしていた。
「え、あ、そっか、もうこんな時間か」
とは言うものの、焦るふうでもない。
「今日は大丈夫、今日は嫁さんが子供と実家に帰ってるから」
「はぁ」
それならいいんだろうけど。
「それに、彼女とも今日は会えないからされて」
「彼女?」
きな臭くなってきたのは、ちょうどこの辺りからだった。
演奏されていた曲もちょうど終わり、静まった空気が不安をあおる。
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