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第12話
(めんどくせぇなぁ)
だから飲みたくなかったんだよ。
はっきり断らなかった自分を恨む。
さっさと帰りたい。帰っていつものバーで飲みたい。
(今日あいつ居るかな)
今日のインタビューのことでヤキ入れてやらないと。頭の中はすでにいつものバーの中で、隣に後輩を従えていた。
「だから、俺は今日家帰っても誰もいないし、彼女も今日仕事だから行っても誰もいないのっ!」
かたや隣の男は、上機嫌でまだ惚気みたいなことを言っている。
もう適当に話切り上げて帰ろうかな。
「でさぁ、なぁ、聞いてる?」
肩を掴んでくる。
その瞬間、簡単に羽織っていただけの上着が、肩からずり下がった。
下に着ていたのはタンクトップ。
肩までしっかり入った刺青が露わになる。
「わっ、すげぇ!肩まで入ってんのかよー!」
「入ってるよ」
露骨に驚くものだから、近くにいた人が何人か振り返る。
恥ずかしくて手を振り払い、上着を着なおした。
「すげーな、全身入ってるのか?」
「上だけな」
「上半身全部?」
「全部ではない」
矛先がこっちに向いてきた。帰るタイミングが失われてしまった。
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