16 / 38

第16話

急激に眠気に襲われたのは、ドリンクを半分飲んだあたりだった。 (あれ……) 一気に夢の底へ突き落とされるような、強烈な眠気を感じた。 瞼が重い。 頬杖をついてなんとか起きる姿勢を保ったものの、カクンッと頭が落ちてしまう。 そんなに眠かったっけ。 頭では違和感を覚えつつも、力が抜けて行く感覚には逆らえない。 「おい、どうした、大丈夫か?」 彼の声がする。 俺は腕で枕を作って、ついにカウンターに突っ伏した。 「らめ、ねぅい」 呂律も回らない。 眠かったとはいえ、この程度の酒量で酔うはずもないのに。 「おいおい大丈夫か~? しっかりしろ、寝るな」 寝るなと言われても眠いものは眠いんだ。 ポンポンと背中を叩かれるが、反応することも出来ない。 あまりにも自然に眠りについていた。 彼は、俺を見下ろして笑っていた。 冷たい目で、片方の口角だけ歪めて。 「悪く思うなよ」 低い声で呟かれた声も、その時の俺の耳には入ってこなかった。

ともだちにシェアしよう!