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第17話

目が醒める感覚は人それぞれなのかもしれないが、俺の場合はまず音を感知して、それから頭が動き始め、それから目を開ける。 俺は遠くで水が流れる音を聞き、まずそれを認識した。 (水……蛇口の水の音だ) 音が止まった。物音がする。 扉を開ける音。静かな足音。 (どこだここ) 横になっているのはわかった。 少し頭が痛い。あと腕も痛い。 時間すらわからない。 目を開ける。 薄暗い部屋の中、物音のした扉から光が漏れていて、逆光みたいな中に誰か立っていた。 (誰だあれ) ぼんやりした頭の中は、自分の今の状態を把握するだけで精一杯で、事前事後のことなど考えもしていなかった。 けれど、俺に気づいた人影が声をあげた瞬間、ようやく回線がつながった。 「おお、起きたか?」 カラッとした笑いを含んで話しかけてくる。さっきまで飲んでたあいつだ。 「……は?」 ろくに声も出せずに、小さく尋ね返すと、なんでもなさそうに近づいてくる。 「随分眠そうだったから、ホテルに連れてきたんだ」 嘘くさい人良さそうな顔をして笑っている。 「まぁ、ビジホだけどな。空いててよかったよ」 ビジホ? 見覚えのない場所だと思っていたら。

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