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第19話
「悪いな、手荒な真似しちゃって」
彼は昼間と変わらない爽やかな口調で話しかけてきた。
状況が読めなすぎて、彼を見たまま体が硬直した。
「実はさ」
そのまま、俺のベッドに腰掛けてくる。
薄暗くて見にくかったけど、近くでよく見たらバスローブみたいなのを着てる。
「さっき店で、薬飲んでもらったんだ」
すぐ隣で蕩けるように微笑む。
「くすり……?」
薬って何のことだ。
「眠そうだったから、よく眠れる薬」
「は……?」
何言ってんだか全然わからない。
「トイレに行ってた間に、ちょっと薬入れさせてもらったんだ」
と、摘んで何かを入れるような仕草をする。
合点がいった。
ドリンクを飲んでた時の、あまりに急激な倦怠感。薬のせいなら説明がつく。
「なんで、そんなこと」
としか言えなかった。
薬を飲ませたとか言うのも、わざわざホテルに連れてきたのも、何でか拘束されてるのも、なんでそんなことをしたのか、恨みを買った覚えもない。
(いや、もしかして)
帰りたいオーラ出しすぎたか?だとしたって拘束されるほどでは。
なんてのんきに考えている場合じゃなかった。
だからって明らかに拘束していい理由にならないだろって。
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