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はじめての自己紹介
トビラの中を進むと、ここ二週間、見慣れた家の玄関に出た。
「ここが、お前の家か?」
靴を脱ごうとごそごそとしていると後ろの方から入ってきた男前さんから声がかかる。
「そうですよ?あ、ここ土足厳禁なので靴って言うか甲冑?、脱いでください」
靴を靴箱にいれながら答えた。
そして男前さんがはいている靴って体格に見合ってでかいから靴箱に入らないし、真っ黒な鎧とセットになるとますます入らない。
その上この人全部ふくめて土とか血肉がこびりついて男前さんも込みでまさにアンハッピーセット、そのままじゃ家にあげられないね…。
男前さんは慣れた手つきでガチャガチャと音を立てながら靴や鎧を脱ぎ、何処に置こうかとキョロキョロしている。
とりあえずタオル敷いてその上に置いてもらえばいいか(´・ω・`)
「お、気が利くな、所で他の奴は?、親御さんとか」
人?、この世界に?そんなの。
「いないに決まってるじゃないですか~」
いたら逆に怖いし仮にここがゲームの世界でゲームやってた人たちが来ると言う仮説を立てるにしてもお母さんゲームしてなかったから来る可能性はないね。
うん………なんか、悲しくなるから考えるのやめとこ。
着ていたローブを脱いで玄関の横にあるハンガーラックにかける。
「…………そういや今更だが名前聞いてねえな、名前なんて言うんだ?」
男前さんは我が家の如く僕のお気に入りソファーにどかっと座り込むと聞いてくる。
おいこら勝手に座るんじゃないよ…………。
にしてもそういや僕まだ自分の名前一度も出して無いね、自分の事名前呼びとかぶりっ子天然じゃ無いし。
でも名前か……。
男前さんの座っている白いソファーを見つめながら考える。
リアルの方かゲームの方か、どっちの名前にしよう? リアル=けんと
ゲーム=ラグーン
……………どっちも微妙。
「おーい聞こえてるかー?」
健人、
健康に生きる人になれと母親につけられた物、でも喘息持ちで目が悪くなったしな。
そしてラグーン。
入江とかが好きでつけた名前。
うーん……………。
「おーい」
ファンタジー的に普段の名前はラグーン、
真名が健人、これでいいかな?、いいよね?。
名字は……………パイライト?、確か毒かなんかにそんな感じのがあったはずだから()。
ラグーン・パイライト
うん、これでいいかな。
さて男前さんに伝えようか。
ん?、さっきまでソファーにいた男前さんがいない。
?、そういえば僕なんか視界高くない?。
「おいこら」
え……………………?、斜め上から耳に向けてバリトンのいい声が…………、恐る恐る声のした方を向くと…………。
「ん''!?」
目 の ま え に イ ケ メ ンが!!
男前さんに何故か抱き上げられてる僕、
なんでっ!?
「なんだよその声」
にやにやと笑いながら僕を抱いているにも関わらず、すたすたと軽い足取りでソファーに向かい腰をおろす。
僕を抱いたそのままで。
「だだだだって貴方が僕のことを抱き上げてるから、その」
究極がつくほど恥ずかしい。
「おいおい顔赤くなってるぜー~?」
いーやー!!!言わないで!!
顔を隠そうとするが男前さんに手を掴まれて隠せない。
「し、指摘しないでくだひゃい!」
あ、噛んじゃった、てへ?、てへじゃねえよ僕!!。
「噛んだな」
てめえこのやろうニヤリとするんじゃないよ!!、
「また!」
「だってお前面白いもの」
この人絶対性格悪い!!。
「ひ、ひどいです!」
「ほらほら怒らない怒らない」
子どもをあやすようによしよしと頭をなでてくれるが。
「誰のせいで怒ってると思ってるんですか!」
原因作ったのは己だろう!!
「だってわざとだもの」
やっぱりわざとか!
「ムッキー!!」
別にどうこうするつもりはないが許さん!!。
「で?名前は?」
「へ?」
なにさいきなり。
固まる僕、笑みを深める男前さん。
「なんだかんだ言って聞いてないからな、で?名前何だ?」
なんか素直に告げるのは嫌だけど……………!。
「ラグーンです」
正直に言っておこう、後々追求されるのもめんどくさいし。
「へぇ、ラグーン………入江か、中々いい名前じゃねえか、で?ファミリーネームは?」
えー、そこも言わないと駄目?。
「言わなきゃダメですか?」
せめてもの悪あがきじゃ。
すると男前さんは黒い笑みを浮かべた、え?。
「言った方が身のためだぞ~?」
うん?。
「何でですか」
なにそれ怖いんだけど…………。
すると男前さんは僕の耳元に口を近づける。
「#こんな__・__#森の中の#こんな__・__#場所に子供が一人で暮らしてるなんてかなり異常だろ?」
いーやー!低い声でなんか鳥肌が立つ!。
しかもこんな、の部分を強調してるから余計ヤバイ!。
しばらくゲーム活動してて交流やだー>_<ってなって、
自分の趣味を追求したE!でここの森の奥に拠点おいたんだから人馴れしてないの!、さすがにこれはきついッつーの!!。
………でも異世界人にそれ通用しないからいくつか補正を入れた方がいいよね。
「それは……………そうですけど」
さて………どう付け加えるか、
男前さんは目を逸らした僕の頭を片手で押さえて無理やり目を合わせられる。
「で、それは後で聞くとしてファミリーネームは?」
目がなんかギラギラしてるのはなぜ?、怖いんだけど?。
「パ、パイライトです」
答えると今度は僕の背中を押してその逞しい胸に頬がぶつかる、そして そして。
「教えてくれてありがとな、」
熱い抱擁、って!。
い、入らないそんなの!、や、やばい!か、顔がまた熱くなってきた!!。
「そそそそそれよりも貴方の名前聞いて
ませんから教えてくだヒャい!」
また噛んだし!!恥ずかしい!。
「ん?俺の名はアルギス 、ファミリーネームは………長ったらしいから城に帰ってから話すわ」
見た目ワイルドだから結構似合ってるか?。
ポリポリと頭をかいた男前、改め、アルギスさんはポンポンと僕の背中を叩き優しい手つきで僕をおろしてくれた。
やっと離れた…………ホッ。
「じゃ、じゃあアルさんとよばせてもらいますね。」
言いやすい名前でいこう。
「おう、それでいいぜ、」
やった!。
「では早速アルさん」
僕はアルさんの前に向き合う。
「何だ?」
ん?、と首を傾げるアルさん。
「お風呂に入ってきてください」
気にはならないけれど結構あせくさいのよ貴方。
僕の言葉を聞いたアルさんは嬉しさ半分びっくり半分と言った顔になり。
「風呂あんのか!?」
え?、そんな嬉しそうにすること?。
「はい、じゃあお湯をためてきますので少々お待ちください」
「ありがとな!ところでそのかたっくるしい敬語どうにかならねえ?」
え?、敬語?。
「年上には敬意を現せ、なので無理です」
見た目からして明らかにこの人年上だからね!
上下関係きっちりした部活に入っていた僕は敬語が自然とでる、そしてそれを崩すのにはかなり時間を要する、要するに初対面の人に砕けた口調は厳禁なのだ。
「ふーん、年は?」
アルさんはつまんなそうな顔で聞いてくるけど、
「秘密です」
まさか僕が15なんて言えやしないよ、それこそまた追求されて大変なことになってしまう………、
「ちぇっ」
凄いつまらなそうにしてるアルさんは置いといてお風呂場へ向かう、ついでにまだ火照ってる顔を冷やさなきゃ!。
★★★
(アルギス視点)
お風呂場らしきところへ消えたラグーンを見送り、改めてこの広い家の部屋を見渡す、
ここが森の中とは思えないほどのきれいな部屋、本はとにかく貴重で一冊で金貨数枚はかかるはずなのに本棚にぎっしりと詰まってる、
上質だとわかるソファーやベッド、厨房には見たこともない大きな箱や器具
他の家具もどれも城の部屋と引けを取らないほどの見栄え、
そして一番気になるのはあの船だ、木でできてない硬すぎず柔らかすぎずと不思議な触り心地のする船、ラグーンはゴムと言ったが俺が知ってるゴムは普通もっと固いはずだ。
最初眠気と空腹に襲われながら死体が転がる戦場を歩いていた時にあいつを見かけた。
こんな場所に何で子供がいるんだと疑問に思ったがその目の前にいるアンデッドを見て血の気が引く。
戦場であった敵は躊躇なく殺せるが、何の罪もない子供が死ぬのは見過ごせない、そう思いそこに行こうとするが。
ーボブん!!。
「ギィ''イ''ア''ァア''ァアア!!!!!!」
突然破裂音と共にアンデッドの頭がもえだしアンデッドの断末魔が辺りにこだます。
「おかしくねえかおい…………」
魔法を使ったのなら魔法を放ったときにでる魔力の流れを感じるはず、だが今の物は魔力を感じなかった。
じゃあ何をした?気になるな………。
ならば直接聞こうと子供を看ると森の中に入ってしまう所だった、
あの子供の魔力の欠片、気配をを辿って探し、そこに行くと見たこともない広い湖があった。
そのすぐ近くであの子供は何かに向けて強く息を吹きかけてるようで、顔が真っ赤になっていた。
しばらく相手の方もみえる位置で観察していたがやっていることに必死なのだろう、一向に気づく気配がない………必死なところが可愛いじゃねえか。
しばらくしてやっとおわったのか晴れ晴れとした顔でバッグを漁るがまた顔を歪める。
疑問に思い少し近づくと、子供はすぐそばの木の幹に腰掛け何かをしだした。
俺は子供とは別に子供が必死になって作ったもの興味が行き、黄色い小舟に近づく。
黄色い船だ、だが。
船にしたら丸いしさわり心地がよく柔らかい。
かといって脆い訳ではないな………試しに寝っ転がるとあのテントの固い簡易ベッドとは比べものならないほどの寝心地の良さ。
俺は眠気に逆らえずそのまま眠ってしまった、
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