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第4話
遡ること数週間前……。
まぁ遡るほど昔の話でもないんだけど、きっかけは写真投稿アプリの写真についた、例の英語のコメントだった。
「その刺青の入ったシェフをうちで雇いたい、ちょうど腕のいいシェフを探してたんだ」
みたいなことが書いてあった。
それからがひどくて、後輩のSNSに何回も何回も何回も何回も俺宛のメッセージを送って来やがったのだ。
奴はもう素性を隠そうともしていなかった。とにかく「シェフを紹介してくれ」「その刺青の男に会いたい」と何度も何度も。
最終的に後輩の方が「兄さんマジ何とかして!」「ってかマジであのCEOとヤッてたのっ?冗談だと思ってたのに!どんだけ度胸あんのマジで!」って縮み上がっちゃって、さすがに、申し訳なくなって俺のメールアドレスを教えたわけだ。
矛先がこっちに向くと、攻撃の手は余計に激しくなってしまって…。
既読スルーを続けるにも大量のメッセージが届いて、もはや迷惑メールレベルだった。
「ったく、仕事しろよ」
少し目を離せば一通、また一通と届いていて、パンを作る手も止めるほどだった。
しつこすぎ。仕事しろ。
一度も返信したことなかったけど、腹に据えかねて返信した。
そしたらもっと酷くなった。
「やっぱりお前なのか!?」
「会いたかった、ずっと探してたんだ」
「また出会えるなんて運命に違いない」
こっちは名乗ってもいないのに、本当に分単位でメールが届くようになってしまった。
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