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第6話

「今度バカンスに行くんだ。本当は自宅に招待したいところだけど、別荘に招待させてくれないか。南半球のある島なんだ。航空券を送るよ」 バカンス。 その一言がなんだか妙に心に残った。 (そういえば旅行なんかしばらく行ってないな) 最後に行ったのは数年前、当時付き合ってた彼女と行った沖縄だ。 沖縄も良かったけど、海外となると本当にしばらく行ってない。 「えー、行っちゃいなよ兄さん!足代まで出してくれんでしょ、絶対特じゃん!」 ウン十万浮くじゃん!と後輩は目をキラキラさせながら言う。 だからお前が行けよと言うと、また腕でデッカいバッテン作りやがる。 「俺学生だし、掘られるのも嫌だし、ね?」 「ね?じゃねーよ。学生関係ねぇし」 でも正直、こんなにいいチャンスもなかなかないよな。 すげぇVIPが別荘に招待してくれる上に旅費まで出してくれる。 映画やドラマじゃあるまいし、そんな馬鹿な話あるわけないよ普通。 (まぁ普通じゃない奴に誘われてるしな) 本当に軽い気持ちで「じゃあお呼ばれのするわ」と返信していた。 その後も分単位のメールは届き続け、当日に至ったわけだ。 なんだかんだ言って拒否しなかったのは、俺も嫌ではなかったってことなんだろうな。

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