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第10話

車内は1人がけのソファをそのまま持ち込んだみたいな広く大きな座席で、後部座席に至っては、リムジンみたいな向かい合わせの革張りのソファ席になっている。まるで移動式の高級バーだ。 雰囲気に圧倒されていると、出発するぜ!と高いテンションで言う。 赤土の大地を、ゴリゴリのデカい車が突き進む。こんな車他には走ってない。道路っ側の掘っ建て小屋みたいな家や商店を、次々になぎ倒すのではないかと思うほどに。 「すげー車だな、こんなの乗ったことねぇよ」 ガタガタ道に揺られながら、車内でキョロキョロしてしまう。 「そうか? ただのハマーだぜ」 「ハマーに乗ったことねぇもん」 「そうか。日本の道は狭いからな、ハマーなんか走ったらすれ違えないだろうしな」 「そうかもね、見かけないこともないけど、あんまりいないかもな」 見かけないレベルで言ったら、この島でこんな車見かけることもないだろう。 リゾート地があるらしいけど、本当なのか疑わしいくらい、発展途上の様子が見てとれる。 「空港を降りてびっくりしただろうが、別荘はこんなところじゃなく、もっと海辺の方にあるんだ」 思いを見越したように言う。 「海辺の方はすごいぜ、別荘だらけなんだ。俳優や財界人、政治家の別荘ばっかりさ。その辺歩いてれば会うしな」 「わぉ、マジかよ」 「世界有数のリゾート地だからな。プライバシーの確保も万全さ」 聞けば、別荘地帯専門の警備がいるそうだ。それとは別に、各々が雇う警備もいるから、物々しくもあるという。

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